Love nest~盲愛~
「怖いか?」
「……少しは」
「フフッ、少しだけなのか?」
「未知なる部分という意味では」
「他にあるのか?」
「……ないとは言いません」
「意味深な発言だな」
彼はいつだって心の奥まで見透かしている。
私が子供すぎるのかもしれないけれど。
結婚すれば、貞操の義務が生じるけれど、お互いの任意の下で外に関係を持つ人もいるとあかりさんから教わった。
お金と欲で繋がる関係。
自分もそういう世界に足を踏み入れたと思った時は、納得もしたし理解もしたつもり。
だけれど、いざその場になってみて、初めて気付く感情がある。
結婚したら、自分以外の人には身も心も許して欲しくない、という感情を。
だからこそ、自身がない。
心なら何とか繋ぎ留められそうな気がするが、身は……。
「何か言いたげな顔だな」
「何でもお見通しなのですね」
「フッ、俺を誰だと思ってる」
いつだって余裕のある眼差しを向ける彼。
何事にも動じない心が鍛えられて来たのかもしれないけれど。
そんな彼相手に、私は満足させれるとは思えない。
「結婚したら、外に女性を作りますか?」
「どういう意味だ」
「私の全てを捧げたとしても、哲平さんの身も心も満足させられるとは到底思えないから」
「………フッ」
「おかしいですか?」
「あぁ」
「家庭の外に作って良いとは言いませんけど、私が知らない所でなら我慢します」
「我慢、……出来るのか?」
「だから、知らない所で……ですよ」
あからさまには認めてあげれない。
そこまで、寛容な対応が出来るほど大人ではないから。
彼は俯く私を優しく抱き締めた。