Love nest~盲愛~


「さっきも言っただろ、俺は冗談が嫌いだ」

「っ………」


淡い期待も一瞬で消え失せた。


こうなったら、自暴自棄だわ!

堕ちる所まで堕ちたのなら、もう怖いものなんて無いわ。

そうよ、もうこれ以上、堕ちようがないじゃない。


名前やパーソナリティは分らなくても、容姿は完璧な人だわ。

初めての相手がお金で買った相手という事が癪だけど、風俗で不特定多数を相手すると思えばマシかもしれない。


誰にだって苦はあるもの。

楽して倖せにはなれないのよ。


私は地道に働く事すら出来ないのだから、残る道は限られている。

道のりが考えていたものとは大分違うけど、命がある事に変わりはない。

そう自分自身に必死に言い聞かせて………。



「世の中、タダより高いモノは無いんですよね?」

「………どういう意味だ」

「先程、私に言った言葉です」


彼が私を手に入れるのならば、私もそれに見合う対価を手にしたい。

所持金2560円しかない貧乏人だけど、私にはまだ価値があるはずだわ。


解雇されたのなら、彼とは対等なはず。

雇用者ならば言いたい事も多少は我慢しようと思ったけど、クビになったのならば言いたい事は言わないと損だわ。


「私も先程言いましたよね?……私は、安くありません……と」

「フッ」


彼の口車に乗らないように、私は私のやり方でやるまでよ!


挑発を挑発で返すようにじっと見据えると、


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