Love nest~盲愛~
「今日は何になさいます?」
「ん~何にしようか……」
「ウイスキーなんて如何です?」
「そうだな、今日はウイスキーにしようか。バランタインはあるかい?」
「はい、ございます。……すみません」
宮本様にお飲物をお聞きしたあかりさんは、すぐさま手を上げ黒服に合図を送る。
そして、あかりさんのすぐ横に腰を下ろした黒服に耳打ちした。
キャバクラは基本セット料金で1時間1万円前後が妥当で、キャストと呼ばれるキャバ嬢が席に付き会話をする。
そして、セット料金内でハウスボトルと呼ばれる低コストの焼酎やウイスキーが無料で飲めるのだが……。
あかりさんは『ウイスキー』と営業スマイルで口にしただけなのに、宮本様は高額なボトルをオーダーされた。
さすが、NO.1である。
きっと、お客様との信頼関係もしっかり築かれているのだろう。
すぐさま運ばれて来たのは、30年物のウイスキー。
ビールや焼酎に比べ単価も高く、それを簡単にオーダーする宮本様は、それ相当のご職業の方とお見受けした。
そして、ドリンクを作るのはヘルプの務め。
だから、私は迷う事無くグラスに手を伸ばすと、
「宮本様は水割りを濃いめで」
「……はい」
グラスの下に自分のハンカチを置き、グラスに氷を入れマドラーで馴染ませる。
角の取れた氷はグラスの中に空間が出来る為、そこへ氷を足し、通常より少し多い量のウイスキーを注ぐ。
そして、そこへ水を注ぎ、丁寧に撹拌して―――。