Love nest~盲愛~


「お待たせ致しました」

「ありがとう」

「私も頂いても宜しいですか?」

「あぁ、勿論。えりなちゃんも一緒に」

「宜しいのですか?…………有難うございます」


優しく頷く宮本様に笑顔で会釈し、急いで水割りを2杯作る。

乾杯する為に、宮本様を待たせる訳にはいかないからだ。


乾杯を済ませると、あかりさんは宮本様と会話を弾ませる。

その間に私は、宮本様用のチェイサーをお作りする。


チェイサーを作り終え、宮本様の水割りのグラスの少し左側にそっと置くと。


「えりなちゃんは、物静かな子だね」

「えっ?………そうですか?」

「ん、雰囲気があかりに良く似てるよ」


宮本様の言葉にどう反応していいのか解らず、あかりさんに視線を向けると、柔和な表情で小さく頷いた。


「……嬉しいです。あかりさんは、私の尊敬する先輩なので」

「困った事があったら、あかりに何でも相談するといいよ。この子はこう見えても結構苦労していてね、話していると私の方が勉強になるくらいだ」

「えっ、そうなんですか?」

「あぁ。だから、私もこうしてたまに相談しに来るんだよ」

「宮本様ったら、もう酔われたのですか?」


あかりさんが少しはにかんだのを眺めながら、宮本様は優しく微笑みグラスに口を付けた。



その後も楽しく3人で会話していると、


「えりなさん」

「ッ?!」


突然、小声で名前を呼ばれた。

その声のもとに視線を向けると、黒服が腰を落として、店内の喧騒に消え入りそうな声で呟く。


「ご指名です」

「はい?」

「指名が入りました」

「…………え?」


< 4 / 222 >

この作品をシェア

pagetop