Love nest~盲愛~


手渡されたのは、ニースラウンドネックのシフォンワンピ。

サーモンピンクが上品さ醸し出し、ウエスト部分をリボンで結ぶデザインは愛らしさを演出していて。

そして、肩口にあしらわれたビーズがピリッとスパイスを効かせている。


『最後』という事は、この服で人前に立つという事になる。

どんな場所かは解らないが、この洗練された服を目にして、ますます緊張が走った。



試着室のドアを開けると、足下にヴォーグソリッドカラーのトウスティレットのハイヒールが。

長身の彼に合わせてなのかもしれないが、さすがに10㎝を超えるヒールを履きこなす自信は無い。

歩くと言うより、靴に歩かされてる状態になること必至だわ。


けれど、私に拒む事も辞退する事も選択肢にはない。


小さく息を吐き、足先を忍ばせた。


履き心地は悪くない。

ううん、思ってた以上に歩きやすい。

普段と違う見晴らしのいい景色に感動しながら、ゆっくりと彼のもとへと。



「お待たせして……」


彼は長い脚を折り畳むようにしてレザーソファに腰を下ろしていた。


「ん、似合うな」

「………そう……ですか?」

「あぁ、紅い薔薇がいいアクセントになってる」

「ッ!!」


彼の言う『紅い薔薇』って、首筋にしっかりと刻印されている証の事だわ。

スカーフかストールで最後の仕上げでもして貰えるのかと思ったけど、私の考えが浅はかだったわ。


足下に視線を落として、気付かれぬように小さく溜息を零すと。


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