君と想い出をもう一度
ラルムは懸命にこらえていた。

苦しい。辛い。叫びだしたくなるほど、胸が痛い。


自分がミュウにとってただの他人、であること。


覚悟はしていたが────キツい。


そしてもう一つ。

ミュウの瞳の色が違うのである。


瑠璃色だった瞳は、今では灰色になっていた。


虚無のせいで、ミュウの【色】さえ奪われてしまったのだ。


まだ上手く頭が働かないのか、ミュウはぼうっと外を眺めている。


「…ミュウ、俺はちょっと用があるから行くな。その間にあそこにある、」

キョトンとするミュウに微笑みながらキャビネットを指差す。


「キャビネットから服選んで着ろよ。なるべく動きやすいやつ。そんな服じゃ動けないだろ?」


今着ているのは白い長袖パフスリーブの、裾がチュールで広がっている膝丈ワンピースだ。


「分かりました」

ミュウが頷くのを見てから、ラルムは外に出た。


ズルズルと壁を背にしゃがみこむ。


「…っは…ミュウっ…」


呼んでも今は返ってこないだろう事実を突きつけられ、ますます気が堕ちていく。
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