君と想い出をもう一度
カツカツと足音がして、角からボルドーが姿を見せた。

「…ミュウは」

座りこんでいるラルムに手を差し伸べながら聞く。


「記憶がありません。常識はあるようですがその他の人間に関する記憶を失っているのではないかと思われます。自分の名前、俺を認識できなかったようなので」


「そう…ですか。ラルム様、貴方の正体───婚約者だということは明かしましたか?」

「いえ。分からないと困惑する彼女に無理に覚えのない関係を押しつけるのは無意味だと考えたので……旅を共にする護衛、と伝えました」


「分かりました。賢明な判断ですがしかし、貴方が無理をしてはいけませんよ。貴方まで壊れてしまえばミュウには酷です」


穏やかに微笑むボルドーにラルムが怪訝な顔をする。

「それはどういう、」

「ミュウの魂、いわば心のなかではラルム様は今でも生きていらっしゃいます。記憶機能を一時的に失っているだけで、魂そのものが無いのではありません」



…どこか自分は卑屈になっていたのかもしれないな、とラルムはため息をついた。


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