上司に秘密を握られちゃいました。
彼の使った箸が、自分の食べる料理に触れただけで、胸を高鳴らせているなんて、子供の様だと自分でも思う。
それでも、"彼氏"が初めてできた私には、それくらいドキドキする瞬間だった。
普段はさほど食べない私も、彼につられて箸が進み、他の料理もあっという間に食べ終えてしまった。
お腹が満タンで苦しいほどだ。
「ごちそうさま。
まさか藍華さんの手料理が食べられるなんて、思ってもいなかったよ。
仕事頑張ってよかった」
これくらいのことで喜んでくれる彼を見ていると、恋って素敵なものだと思う。
「いえ。真山さん、舌が肥えていらっしゃるでしょうし……」
「俺のために作ってもらえるなんて、贅沢だ。
どんな高級料理よりおいしいよ」
「そう言っていただけると……」
あまりに褒めるから恥ずかしくなってうつむくと、真山さんは再び口を開いた。