上司に秘密を握られちゃいました。
「西里さん?」
「は、はい」
真山さんと一緒に早乙女様を見送りながら、『食べられたの?』という質問がぐるぐる頭の中で回っていた。
つまりそれって、アレ、よね……。
「どうかした?」
「いえ。婦人服、戻りますね」
真山さんにこんなことを考えていると気づかれたら、恥ずかしすぎる。
彼と視線を合わさないまま、小さく頭を下げてから社員通路に向かった。
「藍華」
「えっ?」
すると彼はすぐに追いかけてきて、私の腕を捕まえる。
「ありがとう。すごく助かったよ。今日、何時上がり?」
「十八時の予定です」
「了解。俺も早く上がれるように頑張るから、公園の向こうのカフェで待っててくれないか?」
小さな声で私に囁く真山さんは、上司から恋人の顔になった。