上司に秘密を握られちゃいました。
正月が終わると今度はバレンタイン。
正式に採用を打診され承諾したものの、今月いっぱいは、まだ派遣の身分。
私も美晴も、催事に駆り出されることになった。
バレンタインは各テナントで大量のチョコを用意しているけれど、最近は自分のために買う"ちょっと贅沢なチョコ"が人気だとか。
東郷百貨店としても、催事場でチョコレートフェアをすることになっていた。
各地から有名なチョコレート菓子を集め一斉に売り出すと、初売り並みの混雑で圧倒される。
今回は、各メーカーがあらかじめかわいらしくラッピングしたものを納入してくるから、ひたすら売り子に徹した。
「すごいね。万単位だもん」
やっと取れた休憩時間に、美晴と溜息をつく。
「うん。びっくりしちゃった。私、買ったことないもん」
思わずそう漏らすと、美晴は目を見開いた。