上司に秘密を握られちゃいました。

「彼女とは、大阪に行く前に付き合っていた。
でも、キッパリ別れていて、それから会ってもいない」


「気にしないで」とはとても言えず、うなづくことしかできない。


「もう俺には関係のない人。それがすべてだ」


真山さんは私に説明しながら、唇を噛みしめている。

どうしたらいいのだろう。
そうはいっても、気持ちの整理ができない。

真山さんの言う通り、『それがすべて』なのかもしれない。
だけど、モヤモヤしてすべてを受け止めきれないのは、私の恋愛経験が少なすぎるから?


「どうして……」


別れたの?と聞きたいのに、怖くて聞けない。

大阪に転勤になったから仕方なく、かもしれない。
本当は気持ちが残っていたのに、かもしれない。


考えが良くない方向にばかり転がって、口をつぐんだ。
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