上司に秘密を握られちゃいました。
私たち派遣社員は、時期に応じて人員が足りない部署に回される。
だから、もともとおもちゃ売り場の社員もいて、その人たちが主に接客とレジを担当している。
私たちは、"バックヤード"と言われる客からは見えない裏で、黙々と商品のラッピングをする。
「ボールなんてどうやるのよ?」
美晴は興味深々だ。
「飴にしよう」
「飴?」
「うん。不織布で飴の小包装みたいにするの」
「なるほど!」
その時、店内に『雨に唄えば』のメロディが流れてきた。
「紙袋にビニールカバーつけなくちゃ」
「ホントだ。聞き逃してた」
ラッピングに夢中になっていた美晴は、大切なメッセージを聞き逃していたようだ。
窓のない店内からは、外の様子がわからない。
だから雨が降ってきたときは、こうして音楽で知らせてくれるのだ。