上司に秘密を握られちゃいました。
「お客様、お気をつけください」
あれっ?
我先にと走り出す客に注意を促したのは、隣で客を迎えた……公孝さん、だった。
大きな客の波があっという間に過ぎ去ると、「今日も一日お願いします」と私たちにも声をかけてくれる。
そして、一瞬私に視線を合わせ微笑んだ彼は、すぐに去って行った。
「お客様に地図を指し示す時は、指は一本ではなく四本でね」
「はい」
「荷物をお預かりするときは……」
作業の合間合間に、細かな注意点を教えてくれる亀井さんについて、一日たっぷりと勉強した。
高いヒールで一日立ちっぱなしの受付は、思っていたより重労働だった。
それに、玄関の目立つところにいる受付は、常に気を張っていなければならず、気持ちもどっと疲れた。