上司に秘密を握られちゃいました。

真山さんは、他の客に頭を下げながら足を速めて、あっという間に去って行った。


私の周りには、三歳くらいから、小学校低学年くらいの子供達。
ひとりが泣き出すと、連鎖する。


「大丈夫だからね。お母さん、もうすぐ来るよ」


だけどそんな慰めも、なかなか迎えに来てもらえない子供達には、効果はない。


「あの、この子も迷子みたい」

「ありがとうございます。お手数をおかけしました」


また客がひとり連れてきてくれて、五人になった。


「うるさいわね」


客の中には、そんな刺々しい言葉を投げかけていく人もいる。

子供が好きではない人もいるのだから仕方がない。
だけど、自分だって子供だったはずなのにと寂しくもなる。


「申し訳ありません」


頭を下げながら、ちょっと遠回りして、物資搬入エレベーターに向かう。
客用のエレベーターは満員だからだ。
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