上司に秘密を握られちゃいました。
「お名前言える?」
一番小さな女の子は、私の手をギュッと握りしめる。
不安なのが、手に取るようにわかった。
かわいいワンピースを着ておめかしした女の子は、私の質問に首を振る。
普通なら言えるのかもしれない。
だけど、不測の事態にそれどころではないのだ。
私は、自分が迷子になったときのことを思い出していた。
最初は不安でいっぱいだった。
だけど受付嬢が優しくしてくれたから、制服のかわいさに目を輝かせ、迷子を満喫するまでに至ったのだ。
私もそうならなければ。
この子たちにとって、東郷百貨店がイヤな思い出にならない様に。
とはいえ、子供たちを連れての大移動は大変だった。
「今から遊びに行きますよ」
私の両手は取り合いになった。
皆不安で、引っ付いてくる。
お母さんって、こんなに大変なんだ。