従順なペットは愛を囁く
負のオーラ漂う女がここにいます。
電車に揺られながら、ぶつぶつ呟いて、時に窓にうつる自分自身を睨みつける。
自然と、自分の周りに誰もいなくなる。
誰か、私を癒して。
がんばったね、君は何も悪いことなんかしてないよ。
って、言ってほしい。
お誕生日おめでとう、って。
バッグの中でスマホが振動する。
何度も、何度も。
誰とも話したい気分ではなかった。
康之さんからだったら尚更、でたくなかった。
けれども、最寄駅に着いたところで、少し冷静になる。
訳も言わずに走り去られたら、やっぱり嫌な気持ちになるよね、と。
はっきりと、別れを……、でももし、戻ってきてほしいと言ってくれるのなら、考えてみよう、と思った。
着信は、康之さんからではなかった。
『おーい、誕生日おめでとー! 紗那。邪魔してごめん。今日は康之さんとラブラブだろうから、明日は俺に祝わせて。休みだから、ずっと家にいるよー。』
留守電のメッセージに涙が出てきた。
どうして、康之さんじゃないのかな。
日向、邪魔なんかじゃないよ。
日向が彼氏だったらよかったのに。
涙があとからあとから流れて、止められなくて、しゃがみ込んだ。