だめだ、これが恋というのなら
その涙を見て、俺はキスするのをやめた。
そんなに泣くくらい、俺のことが嫌いってこと?
そんなに涙を流すくらい、俺のこといやなの?
俺が、お前に、今キスしたこと以外で、何か嫌なことしたか?
なんだキスする、ずっと前から、俺はお前に嫌われてんの?
『…そんなに俺のこと嫌い?』
俺の言葉に彼女は目を瞑り、俺の問いかけの返事と言わんばかりに涙を流した。
『……汚い……』
……え……?
“最低”と罵られることはあったけど。
でも“汚い”、そう言われたのは実に初めてのこと。
俺は一瞬、何かの聞き間違いだと思った。
でも、彼女の涙が、聞き間違いではないと、そう物語っていた。
『……なんで……どうしてこんなこと……するの…?』
『…好きでもないのに…私に触らないで……』
『他の人とキスした、その唇で………私に…キス…しないで………!』
彼女は教科書を拾い集め、そして俺の元から離れようと、
だから俺は彼女の手を引いた。
『……離して…』
『俺のこと、嫌いなんだろ?』
俺の言葉に彼女は何も答えない、何も言わない。
『俺のことが嫌いなら、他の女と同じになれよ?
俺に笑えよ、俺を無視すんな、俺を見ろよ』
でも、彼女は何も言わなかった。
けど
その代わりに、ひきつった顔で、それでも俺に笑った。
『……あんたなんて……だいっきらいよ…』
そう言って、また俺に微笑んだ。