だめだ、これが恋というのなら
『ねぇ、司、今、選んで?
芽衣に会いにファンシーランドに行くのか、それともあたしとホテルに行くのか、ねぇ、どっち?』
麻里の言葉に俺は戸惑う。
だって、こういうの初めてなんだ。
好きって言われたことも、ホテルに行こうって誘われたのも幾度となくある。
でも、俺が、誰かを気にしたことなんてなかった。
気にしたことなかったんだよ。
『司』
『行けばいいんだろ、お前とホテルに』
でも、分からない。
俺は心の中に芽生えた、この正体不明の気持ちがなんなのか、分からない。
だから、俺は、麻里にそう返事した。
『分かった』
麻里はそう言って、出口に向かって歩き出す。
でも、俺は、俺の足は、動こうとしなかった。
接着剤で足と地面をくっつけられたんじゃないかってくらい、そこから一歩も足が動かなかった。
~♪~♪~♪~
俺のポケットで鳴り響く着信音。
俺は携帯を取り、画面に目をやる。
浩二からの着信。
多分、ショー始まるけど、どこにいんの、的な内容。
でも、出れなかった。
『司?』
麻里が振り返り、俺の名前を呼ぶ。
それでも鳴り響く着信音。
『出ないの?』
麻里の言葉に、俺はその着信音を止めようと拒否を選択した。
当然のように音は止まる。
『浩二くんじゃない?』
『多分、けど、行くんだろ?』
俺が声をかけると、麻里は少し悲しそうな顔を見せた。
『行こ』
俺はさっきまで動かなかった足を無理矢理動かすように脳に指令を出させる。
そして追いついた麻里の肩をポンと叩いて、麻里の前を歩く。
もう、アイツのことは考えんのはやめる。