だめだ、これが恋というのなら
せめて夢の国なら、夢を見させてほしかった。
例え一瞬のことでも、この夢の国にいるだけでもいい、彼女に俺を見てほしかった。
『……ごめんなさい…』
そう謝る彼女は、やっぱり泣いていて。
『俺こそごめん。
そういう顔させたくない、そう言っておきながら俺もそんな顔にさせちゃって…』
俺が謝ると彼女は首を横に振った。
『浩二くんが慰めにそう言ってくれて、私、慰められたよ』
きっと、俺の想いなんて、彼女には届かない。
『そっか、それなら良かった、元気出せ!』
でも、彼女が少しでも救われたというのなら、この結果で良かった、良かったんだ…。
俺は彼女に今できる限りの笑顔を送った。
彼女も精一杯の笑顔を見せてくれた。
『芽衣、忘れないで?
俺はずっと芽衣の味方だから、辛い時は相談しろよ?』
俺はそう言って手を差し出す。
彼女はその手に気がついて、自分の手を差し出してくれた。
『ありがとう、浩二くん』
今だけの、ちょっとした握手。
これで、本当に最後。
俺は彼女の良き相談相手として、彼女の恋が上手くいくように応援する、そういう立ち位置になる。
『…何、やってんの?』
不意に司の声が聞こえた気がした。
俺は声の聞こえた方に振り返る。
そこには、息を切らした司が立っていた。