だめだ、これが恋というのなら




願うのはただ一つ。


どうして俺に振り向かないのか、

どうして俺に笑わないのか、

どうして俺を見ないのか、


どうして俺に“最低”というのか、

どうして俺に“だいっきらい”と言ったのか、

彼女が、俺にその訳を話してくれますように。




俺に分かりやすく、

馬鹿な俺にでも分かる言葉で伝えてくれますように。


まだ、彼女が俺と話してくれますように。




願ったら、きりがない、彼女への願い。




なぁ、もし俺が、お前のことが好きとか言ったら、そしたらお前はどういう顔をする?


どういう返事をくれる?



俺がお前に恋をしてると言ったら、

そしたらお前は俺に振り向く?

俺に笑ってくれる?

俺を見てくれる?


“最低”という言葉も“だいっきらい”という言葉も訂正してくれる?





俺は少しでも早く彼女に会いたくて、車のスピードを上げた。



再び訪れた、夢の国。



まだ、まだここにいるよな…



俺は浩二に電話を入れる。




でも浩二はその着信になかなか出ない。



なんだか嫌な予感がする。



『司、どうする?』


麻里の言葉にいい案が思い浮かばない。


もう一度浩二に連絡を入れるけど、やっぱり電話に出なくて。




もう、浩二とここを出た…?



俺には嫌な予感しかない。




『司…』



『麻里、俺、園内探してくる』


俺はその嫌な予感を打ち消したくて、宛てもないのに、それでもそう麻里に伝える。



『…でも…ここ広すぎて、宛てもないのに探し回るなんて…』


麻里の言葉は重々承知してる。



もしかしたら見つからないかもしれない。


会えないかもしれない…





『麻里、俺、賭けたい…』



『…司…?』



『もし、俺がアイツを探し当てることができたら俺はこの気持ちを恋だと認める。
 でも、もしアイツを見つけられなかったから…その時はこの気持ちを捨てる…』


俺の言葉に、麻里は頷く。



『…分かった、あたしも手伝う!』


麻里はそう言って、俺と一緒にアイツを探してくれた。


広すぎる園内で、行き交う人に、アイツと同じような背格好の奴に振り向き、でも違くて溜息ついて、でもアイツを見つけるために足を動かす。




なぁ、俺、こんなに必死に誰かを探したことなんて一度もない。

こんなに会いたいと思った奴はいない。



もし、これが恋というのなら。


これを恋というのなら。




だめだ、俺はお前に恋をしてる…。












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