ホルガリズム
ガラス張りの小さなテーブルにマグを置き、立ったまま新聞を開きかけたところで、和葉の車が駐車場から走り出す音がした。



窓の外へ目を向けると、またしても先ほどの雲に僕は見下ろされていた。


小学生の頃、運動会の代休は同じ休日でも日曜日とは何だか違う特別な日のような気がしていたものだ。


久しぶりにくすぐったい様な想いを感じながら、CDラックの上に置いている黒く角ばったカメラを手に取った。



全てがプラスチック製のこのカメラにだけは、まだ春の暖かさが微かに残されていた。
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