あやしやあんどん
死神と言われた少女
 『死神の名付け親』という物語を読んだことがある。
 死神に名付けられたその子供は人の寿命が分かるようになった。人の命とは蝋燭で、その蝋燭の火が消えてしまうと人は死んでしまう。
 死神が彼にそう教えた。そして、死神はあることを約束させた。


『決して寿命を変えてはいけない』とーーー。


 彼はその約束を守ることを約束した。
 彼は大きくなり死神の助言のもと、立派な医者となり有名になった。彼が救ってきたのは蝋燭の火が消えない人ばかりだった。
 そんなある日、彼は国の王様に呼ばれた。王様は重い病気にかかっていた。王様に使える者が彼にこう言った。


『王様の病気を治せたら、お前に褒美をやろう』


 彼はその話に飛び付き、王様の蝋燭を確認した。しかし、王様の蝋燭は消えかけていた。
 褒美が欲しい彼は王様の蝋燭を変えて王様が死なないようにした。王様の病気は治ったが、彼は死神との約束を破ってしまった。
 死神は彼のもとに現れた。死神の手には一本の蝋燭が握られていた。死神は笑い、彼にこう言った。


『お前は約束を破った。今、この手にあるのは貴様の命だ。これを私が消してやろう』


 ふう、と息を吸い込んだ死神に彼は必死にやめてくれ!と叫び謝ったが、死神は何の躊躇いもなく、その火を消した。













 彼女は、その子供が自分と同じだと思っている。彼女は、この物語の子供と同じように人の寿命を知ることができる。
 彼女の名前は哀川サトリ。彼女の通う高校では『死神』と呼ばれている。
 サトリは基本、相手と干渉しない。学校の生徒たちもサトリと関わることをしない。


『哀川サトリと関わると死ぬ』


 いつからかそんな噂が飛び交って、サトリは居場所を失いつつある。
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