君をひたすら傷つけて
 横をつい見てしまう。絶対にここにいないのに義哉の姿を探してしまう。

 この教室で初めて義哉に会い、たまたま隣の席になるという偶然の幸運だったと思う。義哉に最初は好意を持ち、いつしか恋をした。義哉が卒業式前に転校ということにしたのは、義哉が私達と一緒には卒業出来ないからだった。学力的には申し分はないので大検を取ればいくらでも大学進学は出来る。でも、それも難しいだろう。

 私が一緒に居る時は明るく振る舞っているけど、私は義哉の病気の進行を知っている。日を追うごとに徐々に義哉は体力を失っていく。出来ることが減ってきていた。


 でも、それを義哉は受け入れているようだった。自分の行き着く先を見据える義哉は残された時間を少しも無駄にしないようにしている。そんな義哉の傍に私はいた。出会わなければこんなに胸を痛めることはなかったろう。でも、どんなに心をボロボロにされたとしても私は義哉に会えたこと。お互いに思いを交わしあったことで幸せを感じていた。人を本気で愛することの重みを教えて貰えたと思う。


「雅。卒業しても会おうね。大学生になったらもっとゆっくり会えるよね」

 そう言って抱き着いてきたのはさやかだった。ソフト部の部長とかしてハキハキとしているのに、さすがに卒業式の今日は涙を流している。卒業は新たな道へ飛び出すための第一歩。でも、一緒に過ごした日々が消えることはない。これからの人生に大学は違ってもさやかとはずっと友達だろう。
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