君をひたすら傷つけて
「私が心配しているのは慎哉さんがマネージャーの仕事を休んでも大丈夫なの?ってことだけど」

 慎哉さんは何事もなかったかのように穏やかに微笑んだ。まさか育児をするつもりだとは想像もしなかった。

「その辺は抜かりない。海も協力してくれると言っているし、社長にも了承して貰っている。ただ、出来るだけ不都合がないように、準備をしないといけないがな」

「いつ休みを取るの?出産は予定日であって、決まっているわけじゃないのよ」

「雅が出産した日。その次の日。退院した日、それから一週間は休みの予定だよ。入院中も毎日会いに来る。一週間の休みが終わっても出来るだけまりえさんのマンションに会いに行くよ。雅がの体調によると思うけど、出来るだけ早くマンションに戻ってきて、三人で暮らしたいと思っている」

 出産後、一週間は入院して、それから自宅に帰るのだけど、私は病院からまりえのマンションに行くつもりだったけど、慎哉さんは一週間、自分が私の世話と子どもの世話をするつもりみたいだった。

「本当に大丈夫?」

「雅が心配することはないよ。さ、俺もシャワー浴びてくる。雅はベッドで待ってて」

 そういうと慎哉さんはバスルームに消えていき、しばらくして水音が聞こえだした。私はというとさっきまでの緊張がぶっ飛び、慎哉さんが育児をするつもりだということに驚きすぎていた。本で勉強して、父親教室にも通うつもりだなんって誰が信じるだろう。あの敏腕マネージャーと言われた慎哉さんが『イクメン』を目指しているなんて……。

 私はベッドルームにはいかず、リビングのソファに座ると、何気なくテレビを付けた。見たいテレビがあるわけではないけど、少し落ち着くために時間が必要だった。
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