君をひたすら傷つけて
 静かに繰り返される唇の甘みに酔い痴れていると、身体に少しの重みを感じた。でも、それは私の身体に負担にならないように微かに感じる重みだった。唇から次第に首筋にキスを落とされ、ゆっくりとバスローブの紐が解かれていく。首筋から鎖骨に唇が落とされると、余りの気持ちよさに私の背中が湾曲した。

「恥ずかしい。そんなにいっぱいしないで」

「綺麗だから大丈夫」

「少しお腹出てきたし」

 慎哉さんはそっとバスローブの合わせ目から手を滑らせると、私の下腹部に手を添えた。そして、優しく撫でた。『あったかいな』そんな言葉を囁くと、さっきよりも深く唇を重ねた。そして、潤んだ瞳を私に向けた。

「誰よりも愛している。雅。三人で一緒に幸せになろう」

 手から流れる優しい温もりに私は涙が出そうになった。そして、繰り返されるキスに私はその優しさに身を委ねた。ドキドキはしている。でも、さっきのような焦燥感や緊張感もなく、ただ、素直に慎哉さんの温もりに抱かれた。

 二人とも全てを脱ぎ去って、生まれたままの姿で慎哉さんは深く私を抱き寄せた。慎哉さんに抱かれるのは二回目。でも、あの時と違うのは私の気持ちだと思う。里桜ちゃんの幸せそうな姿に羨んだだけでもなく、言い訳をしながら抱かれたわけでもない。

 ただ、愛しているから抱かれるということ。深く抱き寄せられながら、私は身体に心地よい熱を感じた。愛しさと少しの苦しさを感じながら、私は優しさに包まれていく。愛されているのを感じながら抱きしめられていた。
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