君をひたすら傷つけて
 お兄さんはしばらくしてから和室に戻ってきた。ただ、車の鍵を取りに行くにしては時間が掛かったから、私を最後に義哉と二人っきりにしてくれたのだと思う。


「そろそろ行こうか」

 お兄さんはこんな時に送って貰うのは申し訳ないと思うのに絶対に許してくれなくて、何度かのやり取りの後に私はお兄さんの車に乗せられていた。

「義哉の葬儀に来てくれるかな」

「勿論です」

「連絡するから」

「はい」

 車の中で静かに音楽を聞いていると、あっという間に私の家の前までついていた。見慣れた光景を目にすると落ち着く気がした。受験だけでも大変なのに、その受験さえも消え去るようなことが起きてしまった。こうやってお兄さんの車に乗っていると、義哉が亡くなったのは悪い夢じゃないかと思うほど実感がない。あれだけ泣いたのに、私の心は義哉の死を受け入れられない。


「ここです。ありがとうございました。忙しいのに送って貰って助かりました」

「ちょっと、ご両親に挨拶をしていいかな?」

「え?」

「そんな顔で家に帰ったら心配するだろう。目も赤いし、声も擦れているし」

 大学受験の後に泣き腫らした顔で帰るとそうかもしれない。私は義哉のことだけで何も考えることが出来てなかった。お兄さんはそこまで考えて送ってくれたのだと思う。お兄さんは車から降りると、そのまま私の家の玄関にあるインターフォンを鳴らしたのだった。
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