君をひたすら傷つけて
「ご愁傷様でした。ご両親のご心痛お察しします」

「ありがとうございます。本来ならばもう少しきちんとした形でご挨拶をしないといけないと思うのですが、今から告別式の手配もしないといけないので、これで失礼します。また後日挨拶に寄らせて貰えると助かります」

 お兄さんはこんな風に自分を押し殺して、人のために動くのだろうと思った。それは無理をするのではなく、それが当たり前に呼吸でもするように気を配る。こんな時だから一人で帰らせればいいのに、私を家まで送り、お母さんが心配しないようにまで心も配る。

 でも、ふと思った。お兄さんはいつ自分のために時間を使うのだろう?

 出会った時から人のことばかり…。自分のことはいつも後回し。そんなお兄さんは何時泣けるのだろう。そんなことを思っていた。


「お忙しい中ご丁寧にありがとうございます。告別式は明日ですか?」

「はい。明日です。それでは失礼します」


 そう言い残してお兄さんはまた義哉の待つ家に帰って行った。ドアが閉まると、お母さんはわたしを見つめ優しく微笑むとゆっくりと私の身体を抱き寄せたのだった。


「雅。おかえりなさい」

「ただいま」

 私はお母さんの胸に抱き寄せられると、フワッと涙腺が緩みだす。あれだけ泣いたのに、まだ涙は残っているようだった。
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