君をひたすら傷つけて
 義哉からの初めて貰った手紙はさよならの手紙だった。


 私は何度も何度もその手紙を読む。義哉の溢れる思いに自分の気持ちを重ねると愛しさが込み上げるのを止められない。溢れる涙はあれだけ泣いたのにまだ枯れてないのだと思い知らされる。泣いても泣いても義哉が私の傍に来てくれるのではないと分かっているのに、今はただ泣きたかった。


「忘れるわけないよ。今もこんなに好きなんだもん」


 そう言葉を零すと義哉に私の気持ちが届くように祈りながら空を見上げる。

 真っ青な空に灰色の枝が張り、そこには淡い桃色の花びらを零した桜が目に映る。満開にはならないけど、それでも十分に綺麗で視線を捉える。


 綺麗で可憐なのに…こんなにも苦しい。

 私は涙で溢れる瞳で桜の花びらを見つめる。

 私はこの日の桜を一生忘れないだろう。


 咲き始めた桜の花は色褪せることなく私の心に咲き続ける。私の義哉への思いのように…。


 儚げで淡い桃色が胸に染みた。
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