君をひたすら傷つけて
 でも、僕は、雅に出会った。
 出会ってしまったんだ。


 そして、僕は雅に恋をした。


 雅と出会ってからの日々は今までの寂しさを全て埋めるくらいの幸せだった。たまたま隣の席に座るという偶然という名の奇跡に僕は感謝したよ。こんな病気で苦しい思いばかりをしていたけど、最後の最後に神様は居たんだって思った。


 毎日、雅と数学の問題を解く。


 たったこれだけのことだけど、僕にとっては生きていることを実感させてくれる時間だった。毎日、病室のドアが開くのを待つ僕がいる。必ず雅は来るのが分かっていたから、それを待つのが僕の全てになりつつある。


 でも、僕が幸せということは雅を不幸にすることだとも分かっている。

 僕は君をひたすら傷つける。

 出会ってしまったことが、君を手放せなかったことが…。

 それでも、傍に居たいと思った僕を許して欲しい。こんな僕を受け入れ好きになってくれてありがとう。過ごした時間は僕にとって宝物だった。


 僕は今も雅を愛している。これからも、愛し続ける。だから、雅は僕のことを忘れて欲しい。

 僕が望んだ未来を…微笑みに包まれる未来を歩いて欲しい。誰よりも幸せに、そして微笑みを浮かべることの出来る毎日が送れるように祈っている。

 自分勝手な僕でごめん。苦しい思いをさせてごめん。泣いたかもしれない雅の涙を拭えなくてごめん。でも、誰よりも幸せになって欲しい。それが僕の最後の我が儘だから聞いて欲しい。

 誰よりも愛している雅へ

 雅の幸せを誰よりも祈っている   

 高取義哉』
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