君をひたすら傷つけて
「まりえは優しいね」

「そう?私の本音よ。大丈夫。幸せになれる。私が保障する。雅が寂しいと思う前に私がココにくるかもしれないわよ。日本の生活よりもこちらの方が私には性に合っているから」

 フランスでの生活に不安だった私をさせてくれたのはまりえとリズであまりにも居心地が良すぎた。時間は永遠でないと知っているのに、また目の前に突き付けられる。まりえの言うとおり、いつでも会おうと思えば会える。この優しい時間が少しでも長く続いて欲しい。

「日本に帰ったらまりえに会いに行くわ。その時は一人前のスタイリストになれていたらいいのに」

「雅なら大丈夫。その時私は何をしているのかな。出来ればフランス語を生かした仕事をしたいと思っているの。まだ私の選択肢はいくらでもあるからね。勿論、雅も。雅も日本に帰国したら私に会いに来ることは絶対よ。でも、雅は全然日本に帰ってないわよね。一度くらいは日本に帰った方がいいんじゃない?」

 私はフランスに留学してから一度も日本には帰ってなかった。留学最中に休学し、ファッション関係の学校に通っている私は親にかなり甘えている。リズの仕事の手伝いで学校の費用にはなっているけど、それ以外の生活費で足りない部分は親からの援助だった。日本に帰るのもお金が掛かる。

 一番の理由は私の気持ちだった。一度日本に帰るとフランスに戻って来れなくなりそうで怖かった。もっと自分に自信が欲しかった

「仕事も忙しいし覚えたいこともたくさんあるの」

「でも、帰ってきたら必ずよ」

「うん」

 まりえが帰国する。まりえとリズと私。三人とも性格も違うし、好きなものも違う。それでもお互いに認め合っていたから一緒に過ごすことが出来た。
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