君をひたすら傷つけて
 リズのいう私の殻というのは『恋愛』の事だと思う。フランスに来て、仕事関係で知り合いになった人から好きだと言われ、『恋』を求められた。日本よりも包む隠しの無い思いは分かるけど私の心は揺れなかった。

 そんな中でアルベールは特別だった。

「アルベールは大事な友達よ」

 私がテーブルに着くといつもはコーヒーが出てくるのに今日は温めたミルクが目の前に置かれる。明日、まりえは帰国するというのに、それを感じさせないくらいにいつも通りの二人だった。

「まあ、いいわ。で、雅の具合はどう?まだキツイ?」

「もう大丈夫よ。吐き気も頭痛も収まったわ。あれだけ寝ればね」

「そう。それはよかったわ。色々考えたのだけど、明日まりえが日本に帰るじゃない。だから、今日は思いっきり楽しむわよ。美味しいもの食べて、たくさん話して…約束をするの」

「約束?」

「そう、また三人で会うって約束。拒否権はないから」

 そういって笑ったリズはとっても綺麗だと思った。

 その日、リズはまりえのために美味しい料理を作り、三人で夜遅くまで一緒に時間を過ごした。三人でリビングに座り、楽しい時間を過ごす。


 そして、一緒に時間を過ごす度にこの二人と出会えた幸せを感じる私がいた。
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