君をひたすら傷つけて
「男なら雅をお持ち帰りってことよ。だって、好きな女が自分のために可愛い格好でデートに来たのよ。アルベール・シュヴァリエは鉄壁の理性なのかしら?」

 お持ち帰りも、鉄壁の理性も…。リズの思考に溜め息を零す私がいた。

「とりあえず着替えてくる。アルベールは可愛いと言ってくれたけど」

「なら何で?」

「明日、仕事だし」

 リビングにリズを残し、自分の部屋の戻るとワンピースを脱ぎ、いつもの部屋着に着替えた。可愛らしいワンピースは心を躍らせるけど、自分の部屋でゆったりとした部屋着にホッとする。髪を下ろし、止められているピンを外して束ねるともっと身体が楽になった。

「楽しかったのよ。とっても。でも、朝までとはまだ思えないの」

 ソファに座り天井を見上げ呟く私がいて静かに思い返すと恥ずかしくなるくらいに大事にされた一日だった。いつも優しく親切だけど、今日はいつもとは明らかに違った。恋人とは言えないけど、友達という枠は越えている気がする。義哉を好きなままでいいと言ってくれるアルベールに私はどこまで思いを返せるのか分からないし、これからどうなるのかさえ分からない。

 少し時間を置いてからリビングに行くと、私のマグカップがテーブルに出されていて、そこには冷たい水が入れてある。いつもはカフェオレを入れて飲むけど、今日は水が入っている。

「ありがとう。リズ」

「うん。今の雅に一番合うでしょ」

 リズの言うとおり水は少ししか飲んでないのに身体の隅々まで届く気がした。

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