君をひたすら傷つけて
「この年で誕生日もないんだけど、こんな風に祝って貰えると嬉しい」

「アルベールがこの世に生まれてきてくれた大事な日だもの。お祝いしないと」

「本当に嬉しいよ。ありがとう」

「本当に料理でよかったの?」

「雅が俺のために作ってくれたということだけで幸せなんだ。」

「それならよかったわ。じゃ、アルベール。乾杯しよう。アルベール。お誕生日おめでとう。今年一年も幸せでありますように」

「ありがとう」

 グラスを傾けガラスの透きとおる様な共鳴を聞いてから私はシャンパンを口に含む。私はそんなにお酒の味にうるさい方ではないし、詳しくもない。少し舌に残る甘さとその後に感じる爽やかさが美味しかった。ラベルは見てないけど高価なもののような気がするが分からない。

「美味しい。こんなに飲みやすいのは初めてだし、この味はとっても好き」

「それならよかったよ。貰ったものだけど、雅が気に入ってくれたら嬉しいな。それよりも雅の作った料理を食べてもいい?お腹空いて死にそう」

「うん。それはいいけど、まりえの教えて貰ったレシピだけど、私はまりえほど料理が上手ではないから期待しないで」

「期待するに決まっているだろ。雅が俺のために作ってくれただけで十分に幸せだし」

 そんな言葉を口にしながら、アルベールは私の作ったシーフードドリアを口にする。そんな様子を見ながらドキドキする。味はまりえから教えて貰ったから美味しいと思う。でも、それは日本人としての私の味覚であって、アルベールが美味しいと感じるかというのが気になる。まりえが自分で作ったものなら私も自信を持っておススメするけど、作ったのは私だからいくらレシピ通りとしても自信はない。

 彼は美味しいものを食べつけているから、私の作ったものを美味しいと感じてくれるだろうか?
< 432 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop