君をひたすら傷つけて
「そろそろ送るよ。雅と一緒にいる時間はアッという間だね。今日は本当に楽しかったよ。こんなに幸せで楽しかった誕生日は初めてだと思う。本当にありがとう」

 こういう時にどう言えばいいのか分からない私は大人の女性にはなり切れない。言葉を探すのに、その言葉は中々脳裏に浮かばない。

「今日は帰らないでいい?」

 アルベールはさっきよりももっと困惑した色を顔に染める。私の言っている意味を考えているのだろうけど、それを何度も何度も打ち消しているように見える。

「帰らないってどういう意味?」

「言葉の通り。今日は帰らないの。朝までアルベールと一緒に居ちゃダメ?」

 誕生日とはいえ、私の行動はいつもの私ではない。ワインの酔いが少しだけ勇気をくれている。

「自分が何を言っているのか分かってるの?」

「うん。アルベールは嫌?」

「嫌じゃないけど、自信はない」

「朝まで一緒に居たいの」

 そう言う私をアルベールはそっと抱き寄せた。シャツの感触を肌に感じ鼓動を感じた。激しく鳴る鼓動を聞きながら、私の鼓動も増していく。自分の行動がどれだけ大胆かということも分かっている。恥ずかしさに死にそうだけど、傍に居たいと思った。

「私も自信がないの。アルベールの誕生日は一緒に居たいと思ったの。それじゃダメ?泊まる準備もしてきたんだけど」
< 434 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop