君をひたすら傷つけて
 そんなロマンチックな空間をキュッと引き締めるかのように置かれているのはアルベールの物だと思う。真っ白な棚に置かれているリネンは黒系とかブルー系。綺麗な流線を見せる蛇口の横にはステンレスで出来た小物類はバスルームには似合わないものだった。

 家具はそのままで自分が使うものだけ置いているように見える。アルベールはここで本当に寝るだけの生活を送っているのだろうと思った。

「とりあえず、シャワーを浴びなきゃ。お湯よりも水がいいかも。頭を冷やさないと可笑しくなりそう」

 頭の上から少し冷たいシャワーを浴びると火照った体も気持ちも落ち着いてくる。肩の力が抜けるような気がした。アルコールで火照った体に少し冷たいシャワーは気持ちいい。身体を洗い、髪を洗い、バスタオルを身体に巻き、着替えを取ろうと袋を空けて絶句した。

 そこにあったのはあの勝負下着と…誰がこんなものを着るのだろうかと突っ込みたくなるようなもの。

 スケスケのベビードール。純白なもので勝負下着と対になっているものだと簡単に想像つく。そして、私のパジャマをこの袋から出してこれを入れた人物はリズしか居ない。

 それにしてもリズはどのタイミングで私の荷物を入れ替えたのだろうか?リズと勝負下着の話をした後、私はどうしてもその勝負下着を持って行くことに躊躇してしまい、結局は新しいものではあるけど、他のシンプルなものに変えた。パジャマもシンプルなものにした。なのに、ここにあるのは勝負下着とベビードールだった。

 私がこのタイミングまで気付かないように中身をそっくり入れ替えたのだろう。そして、私に会って、着替えをすり替えたのがばれないようにと先に仕事に行く周到さだった。

 下着はともかくこのベビードールはどうしよう。
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