君をひたすら傷つけて
 今日、着ている服を着て寝るわけにいかないし、かといって、下着だけというのもあり得ない。どうしようかとかなり悩んだ挙句に出した答えは下着はそのままでアルベールにパジャマになりそうなシャツを借りることにした。アルベールのシャツならワンピースのようになるだろうからそれならパジャマとしても十分だと思う。

 問題はどうやってそれをアルベールに伝えるかだった。せめてシャワーを浴びる前だったら、借りることも出来たし、気付いていたら自分のアパルトマンに帰ることだって出来た。でもバスタオルを巻いた状況の私には既に何もかも遅かった。

「アルベール。お願いがあるの」

 私はバスルームのドアを閉めたまま声を出すと、ドアの近くまでアルベールが来たのを感じた。

「雅。どうした?」

「パジャマがちょっと…。アルベールのシャツかパジャマ貸してくれたら助かる」

「いいよ。持ってくるから待ってて」

 しばらくしてドアの前にまたアルベールが来てくれたのを感じた。

「ここに置いているから、俺がリビングに戻ってから取って。すぐにドアを開けてはダメだよ」

「ありがと」

 私は言われたとおりに少し時間を置いてから、ドアをそろりと開けると、そこには籠に入った紺色のパジャマが置いてあった。サイズが大きいとはいえ、パジャマはズボンもあるから助かる。足の長さの違いを感じるけど、裾を捲ればいいだけ。ベビードールはさすがにない。

 着替えを済ませてリビングに行くとアルベールはニッコリと笑った。

「やっぱりサイズが違うね。新品のがなかったから、自分の持っている中で一番柔らかいのを選んだけどそれでよかった?」

「助かった。リズに悪戯されたの。持って来ていた着替えがそっくり入れ替わっていた」
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