君をひたすら傷つけて
「注文しよう。カフェオレとサンドイッチでいい?」
「うん」

 アルベールは注文をしにいってくれて、戻ってくると私の前に座った。

「怒ってるよね」
「そうだね。怒っているよ。それは雅にではなくて自分の不甲斐なさに。雅が帰った理由もそんなに泣き腫らした目をしている理由もなんとなく分かっている。雅が一人で泣くようにしてしまったのは俺の落ち度だ。受け止められなくてゴメン」

「でも、アルベールは何も悪くない」
「好きな女の子を一人で泣かせるようにしてしまった俺に非はある」

 そんな話をしていると店の人がカフェオレとサンドイッチを持ってきた。そして、テーブルの上に置くと、またカウンターに戻って行く。

「そんなことない。私が逃げてしまっただけなの。アルベールは何も悪くない。逃げた私が悪いの」

「俺は俺が悪いと思っているし、雅は雅が悪いと言う。それなら、お互いに悪かったということで仲直りしよう」
「仲直り?」
「そう仲直り。また、ゆっくりと雅と一緒に過ごしたい。そして、泣きたい時は俺のシャツを貸すよ」
「ハンカチ代わりにするにはアルベールのシャツは勿体ないわ。だってデザイナーズブランドものでしょ」
「コットン百パーセントだから洗えるから大丈夫」

 そんな問題じゃないけど、アルベールが私の気持ちを明るくしようと思って言ってくれているが分かるだけ私は少しだけ笑えた。

「さ、サンドイッチを食べたらアパルトマンまで送るよ」

 今日、会わないといけないと思ったと言う、アルベールの言葉を聞きながらサンドイッチに口を付ける。美味しさに顔が緩む私をアルベールはコーヒーを飲みながら見つめていた。
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