君をひたすら傷つけて
『何も言わずに帰ってごめんなさい。それと色々とごめんなさい』

 そんなメールを打つとすぐにアルベールからメールの返信があった。アルベールのメールから時間が経っているのに返信はとても速かった。

『今から少し会えるかな?出来れば今日どうしても会いたい。少しの時間でいいんだ』
『今日じゃないとダメ?』
『ダメじゃないけど、出来れば今日がいい』
『どこに行けばいい?』

 泣いたのが分かる顔で会うのは躊躇したけど謝りたいと思う気持ちも大きかった。だから、そのメールに応えたのだった。アルベールが指定してきたのは私のアパルトマンの近くのカフェで歩いてすぐに行ける距離にある。

 私がそのカフェに行くとアルベールは窓際の席に座っていた。昨日とは違う服装でその爽やかな姿にドキッとした。アルベールは店に入ったところで足が動かなくなってしまった私に気付くとニッコリと優しく微笑んだ。

「雅。こっちだよ」

 そんなアルベールの声に誘われるようにそのテーブルに行くと、アルベールはまた穏やかに微笑んだのだった。いつもと変わらない。

「雅はカフェオレでいい?何か食べる?」
「何でそんなに普通なの?」
「とりあえず座って」

 私の問いにアルベールは今までに見たことないくらいに穏やかに微笑んだのだった。枯れるくらいに泣いたはずの涙腺が緩んでいくのを感じる。自分の身勝手さとアルベールへの申し訳なさで一杯で…。私はアルベールの前に座った。
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