君をひたすら傷つけて
「雅が泣いているわけは分かった。アルベールの件で高取さんが言っているは間違いじゃないと私も思うわ。高取さんの言っているのは正論よ。だからと言ってこんなに雅を泣かせる必要はないとも思う。あんなに頭が切れる人なのに雅が泣くのを想像してなかったのかしら」

「私、ずっと、お兄ちゃんは私の傍に居てくれると思っていたからショックだった。でも、考えてみれば妹でもないのに、無理よね。甘えてたんだと思うの」

「雅を甘やかしたのは高取さんだから、雅だけのせいじゃないわ。あ、とりあえず今日はシャワーを浴びて寝なさい。話は明日にしましょ。私も空港から直行で来たから疲れたわ。ホテルに行くのも面倒だから、今日はここのソファにでも泊まるわ」

 そうはいうけど、このマンションは私と入れ替わりにリズが使うようになっている。名義もリズの名義になっているのだから、リズがホテルに行く必要はない。

「リズは疲れているんだからベッドを使って。私はここで十分だから」

 リビングのソファはリズの身体のサイズに合わせた外国製の物を使っているから、私が横になれば十分にベッド代わりになる。それに、テレビを見ながらここで寝たことも多々あるから抵抗はなかった。

「それは無理ね。じゃ、一緒に寝る?」

「いいわよ。リズが良ければ」

「襲ってもいい?」

「リズがそうしたいなら」

「弱みに付け込んで雅を抱っこして寝てあげる」

 そう言ってニッコリと笑うとリズは私の顔を覗きこんできた。

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