君をひたすら傷つけて
事前に決まっていた雑誌の撮影のことは聞いていたけど、コレクションに参加したことを私は知らなかった。それに日付を聞いてみると、私がお兄ちゃんと一緒に出掛けていた日のことだった。

「雅はどうしていた?途中から仕事が忙しそうだったけど」

 仕事は本当に忙しかった。エマはリズと同じくらいにパワフルで毎日がフル活動で部屋に戻るとベッドに倒れ込むような日が続いている。リズが日本に来てからはCMの撮影のことで右往左往していた。

「エマの事務所の立ち上げは順調に終わったけど、リズが来るまでの間は色々な雑務に追われていたわ。リズの友達のエマはパワフルなの。元々、クライアントはいたみたいだけど、それ以外にも新規開拓をしていくような人で、私もその手伝いをしているの。毎日が飛ぶように過ぎて行ったわ」

「高取さんとは会った?」

 仕事ではなくお兄ちゃんのことを聞くアルベールを不思議に思いながらも、別に隠すようなことはないので私は素直に答えた。

「日本に帰ったら空港に迎えにきてくれていて、不動産屋へも一緒に行ったの。それから義哉のお墓参りに行って、フランスに戻ってくる前は一緒に食事をしてきた。でも、何で?」

「あの人なら雅に会いに来るだろうと思ったから。雅にとってあの人は特別でしょ」

「義哉のお兄さんだから」

 お兄ちゃんのことよりも私はアルベールに伝えないといけないことがある。でも、中々言い出せなかった。言葉の糸口を探っている私を導いたのはアルベールだった。

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