君をひたすら傷つけて
 そんなお兄ちゃんの言葉に頷く私は、フラッシュの中の篠崎さんを見つめた。どこにでもあるような衣装が、ここぞとばかりに素晴らしくみえる。それがスタイリストとしては嬉しくあり、複雑さもあった。篠崎さんが着るから輝くのではなく、彼に似合う服を私が選びたかった。

 誰よりも魅惑的に輝ける手伝いを私がしたいと思う。

 篠崎さんの撮影が押して既に日付が変わっていた。私は何度も帰っていいと言われたけど、今日の篠崎さんの撮影に対する迫力に魅せられて、帰れずにいた。撮影の熱気は私が好きな空間だった。

「高取。今日はカメラマンの伊藤さんがマンションまで送ってくれるって。だから、俺はいいから、雅さんを送ってあげて」

「伊藤さんはなんて?」

「どうも熱気が冷めないらしい。今日の撮影をしながら、少しだけ一緒に飲んで帰る。明日の午前中はオフだし、伊藤さんの話も聞きたいし。いいよな」

「それはいいが、帰ったら、マンションからメールをしてくれ。遅くなったら迎えに行くから」

「子どもじゃないから一人で帰れる」
「でも、俺はお前のマネージャーだ」

「わかってる。でも、今日はもう少し、この余韻に浸っていたい。まだ、あのフラッシュの熱気が身体に残っている。それは伊藤さんも同じみたいで……」

「わかった。でも、身体を壊すような飲み方はするなよ」
「もちろん」
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