君をひたすら傷つけて

心のどこかにある気持ち

 私が里桜ちゃんに会ったのは、それから二日後の月曜日だった。里桜ちゃんに聞いたマンションの部屋に行くと、既に里桜ちゃんは部屋の前にいた。少し緊張したような面持ちなのは仕方ないと思う。二回目に会う人に引っ越しの手伝いをさせるのに躊躇しないわけはない。

 それでも、里桜ちゃんを一人にしたくなかった篠崎くんの気持ちを思うと断れなかった。出来るだけ気を遣わせないように明るく振る舞うつもりだった。

「あ、今日はすみません。よろしくお願いします」

「さ、里桜ちゃん。片付けようか。篠崎くんが業者を頼むって言っていたから、必要なもの以外は処分する方向で。後から事務所の子が段ボールを持ってくるから、それに詰めて運びましょう」

「業者ですか?」

「そうよ。この部屋から何もかも出すつもりよ。篠崎くんから大体のことを聞いているけど、私も篠崎くんの意見に賛成。一からやりなおすのもいいと思う」

 もう少ししたら、まりえが段ボールを持ってきてくれることになっていた。最初から業者に見積もりをさせるなら、業者が段ボールを準備するけど、今回はどのくらいのものを持って里桜ちゃんが引っ越しするか分からないから、段ボールは自分たちで準備して、業者は運ぶことだけを依頼していた。

 コレクションの時の大移動を何度もしているので、女の子一人の引っ越しは簡単なものだった。ただ、いるものといらないものを里桜ちゃんに仕分けて貰わないといけないことが時間が掛かると思う。いくら篠崎さんが全部用意するとはいえ、自分の部屋にある家具などを捨てるのは躊躇するだろう。

「雅さん」

「さ、頑張らないと。水曜日には私も京都に行くようになってるの。それまでに終わらせないと」

 そして、里桜ちゃんと二人で必死に荷造りを始めた。
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