君をひたすら傷つけて
 塾の時間が迫っていた。もし高取くんに会いに行くならすぐにでも動かないといけない。でも、私は動けずにいた。


「藤堂さん?」

 急に名前を呼ばれ見上げると、そこにはパジャマ姿の高取くんの姿があった。白い腕には点滴に繋がれているものの思ったよりも元気そうだった。頭の中ではベッドに横たわり、全く動けないのではないかと想像していたくらいだから少しだけホッとした。


「どこか具合悪いの?大丈夫?」

 高取くんは私がどこか具合が悪くて病院に来たかと思ったようだった。私が首を横に振ると高取くんはニッコリと微笑んだ。

「それならよかった。大事な試験前だからね。でも、今日はどうしてここに?……もしかして僕に会いに来たの?」

「うん。高取くんと話したくて」


「それなら僕の部屋に行こうか?時間はまだ大丈夫?」

 高取くんの部屋は個室で南向きの部屋だった。今の時期はあまり天気が良くないから電気が必要だけど、春先なら暖かな日差しに包まれそう。清潔感の漂う病室はベッドとテーブル。そして、テレビが備え付けられている。テーブルには教科書が置いてあった。

「ここに座ってくれる?」


 高取くんは横に置いてある椅子に私を座らせると、自分はベッドに座った。ニッコリと笑う高取くんはショッピングセンターで別れた時とは顔色が違った。思ったよりも元気に見えた。


「久しぶりだね。元気にしてた?」

「心配したんだから。急に倒れるし、学校には来ないし」


「うん。ごめん。心配させたね」
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