君をひたすら傷つけて
 答えは自分の中にある。

 あの夜はあの夜で、今は違う。マンションの部屋のリビングはお兄ちゃんと私の日常だった。

 抱きしめられながら、背中を抱かれ、優しく咥内を溶かされていく。あの日、抱かれたけど、キスは重ねただけ、こんなに甘いキスではなかった。胸の奥がドキドキしてきて、自分の気持ちが分からなくなる。甘くて、胸の奥がきゅっとなって。苦しくなる。

「忘れられるわけないだろ」

 少し話した唇の間から、囁くような掠れた声が耳に届く。ドキドキが止まらないのに、私は逃げることも出来ずにお兄ちゃんの腕の中で溶けそうだった。自分のしたことに責任を取らないといけない。でも、だからと言って、お兄ちゃんが責任を取る必要はない。

「でも、あの……」

「遺伝子が欲しいというなら、いくらでもやる。だから、俺の子どもを産んで欲しい。嫌なら、このまま俺を突き飛ばしてもいい。でも、俺は離すつもりない」

 私はどうしたらいいのだろう。

 突き飛ばすことなど出来ずに手をそのまま下げてしまった。

  私が背中に腕を下ろした時、お兄ちゃんはビクッと身体を動かし、もっと深く私を抱き寄せた。そして、そのまま抱き上げると、お兄ちゃんの寝室に連れてこられた。マンションの一室を借りているとはいえ、お兄ちゃんの寝室はプライベートな空間で私が踏み入れるのは殆どない。だから、妙に緊張する。

「帰ったきたばかりなのに」

「攻め時は心得ているつもりだ」
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