君をひたすら傷つけて
 里桜ちゃんの荷物はほんの少しで、私の車のトランクに収まるくらいの量だった。

「疲れているでしょうから、マンションの近くで食べましょ。美味しい店があるの。食べたら今日はゆっくり休んだ方がいいわ。疲れているだろうし」

「今はまだ自分が疲れているとは思わないですが」

「そんなもんよ。疲れって」

 そんな話をしながら運転をしていると、横顔に里桜ちゃんの視線を感じた。前を見て話せばいいのに、私の方を向いていたのだと思うと可愛いと思う。

「里桜ちゃん。そんなに見つめられると篠崎くんに怒られそう」

「すみません」

「いいのよ。あまりにも幸せそうだから、からかいたくなっただけ。里桜ちゃんを見ていると幸せな気持ちになる。私も結婚しようかな。お見合いとかも悪くないと思わない。素敵な出会いがあるかもしれないし」

 そんな心にもないことを言いながら、ふと浮かんだのは昨日のお兄ちゃんだった。

「お見合いですか?」

「そう。私って恋愛に向かないの。多分、苦手だと思う。だから、恋愛というよりは一生のパートナーが欲しいと思うの。その人は私のことを何も知らない人がいい」

 不器用な私は初恋に囚われ、心を縛られている。後悔はしてないけど、それでも、もう大事な人を傷つけたくないと思う。アルベールもお兄ちゃんも……。私は傷つけた。

「里桜ちゃん。食事が終わったら、私の部屋に泊まりに来ない?フランスでのことも聞きたいし」
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