君をひたすら傷つけて
第十一章

仕事復帰と長い時間

 お兄ちゃんのマンションに行ってから、数日が過ぎた。私の居場所があったことが分かってからか、私の気持ちは傾いていく。でも、自分から踏み出すことが出来ずに、どうしたらいいのか分からないようになっていた。

 エマとリズは篠崎さんのドラマ撮影の忙しさからか、事務所にいることも少なくなったし、私はまりえと一緒に事務所で過ごすことが多くなっていた。エマとリズが仕事をする分、事務作業も増えていく。そして、リズはイタリアの事務所での仕事もしていたから、限界が近づいているのを感じた。

 フランス語やイタリア語で書かれたメールがパソコンの中に届くと、フランス語はまりえが処理、そして、イタリア語は私が処理をするようになっていた。イタリアではスタッフを雇っているとはいえ、社長のリズが居なければ、仕事が上手くいかない部分があるのか、指示を仰ぐメールが増えてきていた。

 ディーの今シーズンのコレクションの仕事も待っている。

 私がスタイリストとして働けない分の負担は二人に掛かっている。でも、二人とも日本での新たなスタイリストを雇うことをしなかった。どんなに疲れていても、どんなに遅くなっても、二人で頑張っている。

 個人事務所ではあるけど、私は妊娠して、産休育休を経て復帰するような道筋が作られていた。

 私がリズもお兄ちゃんも選べないでいるのを分かっていたエマは私がシングルマザーでも育てていけるように道筋を考えてくれた。

 アメリカでは決して珍しいことではないから、決められないなら一人で育てればいいと。
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