桜ノ華
差し出した箱を、ばっと奪うように取られた。
伝わってよかったとほっと息を吐き、
本に視線を戻す。
「…どうやって開けるんだ」
「え?」
「こういうのは苦手なんだ! 食べろと言うなら開けろ!」
命令口調なのはきっと照れ隠し。
耳まで赤くして、箱を桜に突き出す啓志。
「はい」
くすりと小さく笑って、包み紙を剥がし箱を開けて渡す。
「…チョコレートだな」
「そりゃあそうですよ。これが一番ビターな味ですね」
添付されていた紙にチョコレートの種類の説明書きがあったから、
それを見て一番甘くなさそうな物を指で摘まんだ。
「どうぞ」