あなたと恋の始め方①
 そんな自分の気持ちを言葉にすることすらできない私を小林さんはキュッと抱きしめてくれた。さっきよりももっと近くで小林さんを感じる。逞しくて女の子とは全く違うその温もりに私は包まれていた。温かい腕のぬくもりに幸せが募り、これが夢じゃないかと思ってしまうほどで、小林さんへの思いが募ってくる。


「俺の彼女になって。ずっと傍に居て」


 こんな温かい腕の中に大事なものを抱くかのように優しく抱かれて…。私は小林さんへの思いを実感していた。キュッと抱きしめられた腕の強さで私は少し苦しく思いながらも小林さんの温もりを身体中で感じていた。


「お願いします。でも、私でいいですか?」


 可愛くない自分の言葉にガッカリしながらも、涙は零れてくる。中々止まらない涙を自分の指で拭っても止まらない。小林さんはキュッと私をもう一度抱きしめ、私は小林さんのシャツに頬を寄せた。私以上にドキドキしている鼓動が聞こえ、私だけがこんなにドキドキしているのではないと思った。


 小林さんは大きく息を吐いた。深呼吸を一度して、もう一度私の身体を抱き寄せた。すると、小林さんのシャツに私の涙が吸い込まれていく。


「濡れちゃいます」


「いいよ」

「でも」


「美羽ちゃん。俺、美羽ちゃんのこと大事にするから、俺を選んでくれたことを後悔させないようになるから」


「好きですから後悔なんかしません」



 そんな私の言葉に表情は見えないのに、小林さんの綺麗な顔に微笑みが浮かんでいるのが見えるような気がした。
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