あなたと恋の始め方①
 小林さんが車を止めたのは少し住宅地から離れた場所で、私のマンションからはかなり離れた場所で、そこは道幅が広く、少しなら駐車しても大丈夫だろうという場所だった。小林さんは車を止めると私の方をゆっくりと見つめた。その瞳には私が映っていて、揺れる瞳に吸い込まれそうになる。


 小林さんと一緒に居たい。それは間違いない。ずっとずっと一緒に居たい。


「俺のこと少しは好き?俺は美羽ちゃんのことが好きだよ。ずっと一緒に居たいし、離れたくない」


 小林さんらしい真っ直ぐな言葉に私は泣きそうになる。好きという言葉がこんなにも私を壊すとは思わなかった。好きな人に好きと言われる幸せを私は身体中で感じ、嬉しくて震える私は中々言葉を紡げなかった。見つめるだけで、それ以上は何も言えなくて…。


 嬉しくて嬉しくて…。嬉しいと涙が零れそうになる。


 私の瞳には涙が浮かび、頬を一筋零れた。そんな零れた涙を小林さんは優しく人差し指で拭ってくれた。嬉しくてこんなにも嬉しくて涙を流す私を小林さんはどう思ったのだろう?穏やかで優しい微笑みが私に降り注ぎ、小林さんが私のことを好きだと思ってくれているのが分かる。


 言葉以上に小林さんの私を見つめる瞳が優しく揺らめく。


「俺のこと好き?」


 私はもう、何も言えなくなっていて、ただ、首を縦に振ることしか出来なかった。小林さんはそれだけで私の気持ちを分かってくれたのだろう。

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