あなたと恋の始め方①
 小林さんの言葉に現実に戻る私は手を繋いで歩くと言うことにドキドキしてしまい、駅から歩いただけで自分では何も話しかけることが出来なくて、何度も話しかけてくれる小林さんの言葉にドキドキしながら『うん』とか『そうですね』とかしか言えなかった。


「送ってくれてありがとうございます」

「うん。いいよ。俺が送りたかっただけだから。じゃあ、明日の待ち合わせはさっきの駅で9時くらいでいいかな」


「はい」


「楽しみにしてます。おやすみなさい」


「俺もだよ。おやすみ。さ、早く入って」


「はい」



 私がエントランスを抜けるのを確認してから小林さんはまた綺麗な微笑みを残して自分のマンションに向かって帰っていく。その姿を見ながら、もっと一緒に居たかったと思った。でも、一緒にいるとなるこの時間なら自分の部屋に誘うしかない。一応彼女なのだから、自分の部屋に誘ってもいいと思う。でも、それの意味が分からないほど子どもでもない。


 無意識にハンバーグの時は誘ってしまったけど、ただ一緒に居たいというだけで用事もないのに誘うのも、何か違う気がする。どうやって誘っていいか分からないし、誘って断られても辛い。



 でも、テレビや映画のように用事がないのに一緒に居たいというだけの理由で呼ぶことが出来るようになったら。少し、私は成長出来るかもしれない。



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